2 仲良く

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それから、3日ほど経ったころだろうか、またあの古本屋へふらっと立ち寄ってみた。 何かいい本がないか探そうとしていたし、もしかしたら彼女に会えるかもしれない。 …いや、彼女に会いたい。 あの小柄な身長、きりっとした眉に、生き生きとした目、私は彼女の虜になりつつあった。 「あっ」 小さく声が出た。彼女を見かけたからだ。あの制服、間違いない。 なんと言って近づけばよいのだろうか。 奇遇ですね? おかしいかな。 こんにちは? 平凡すぎないか。 また会ったね子猫ちゃん。おかしな人か。 好きです。これはもう言ったな。いや、そういう問題ではないか。 なんと言えばいいんだろう。考えてもらちが明かない。 この際、思ったことを素直に言えばいいのだ。 こうしたことをあれこれ考えてる間にも、彼女はお店を出て行ってしまうかもしれない。 「こ、こんにちは」 私は、おずおずと近づいた。 「え?」 くるりと、彼女は振り返った。 今日は違う顔をしていた。 ふうむ、なるほど。整形でもしたのかな。 と、一瞬考えたが、そんなわけはあるまい。 ただの人違いだ。 え! 人違い! 恥ずかしい!! 「あ、す。すみません! ま、間違えました!!」 同じ制服だが、彼女ではなかった。 全然知らない女子高生だ。 「あ、いえ、大丈夫です」 彼女に会いたい思いが強すぎて、錯覚したか。 しかも、この女性は確かにかわいい女子高生だが、彼女ほど魅力を感じない。 いやいや、何考えているんだ私。彼女と比べてどうする。 でも、彼女を好きなことをこんな形で再確認してしまった。 彼女は確かにかわいい外見だが。 いや、それにしても彼女は外見もかわいいが、何より美しいのはその声だ。 大人のような声と言っていいだろうか、落ち着きのある声、耳になじむ声、それでいて丁寧な声、聴いているだけで、幸せが足を10本ぐらい生やして、私の後を追いかけてくる。 どんな声だったろうか、少し想像してみよう。 「こんにちは」 そうそう、ちょうどこんな感じだ。優しい声。でも、もうちょっとゆっくりだったような。 「こんにちはー」 そうだそうだ、こんな声だ。やはり彼女の声は素晴らしい。私の心をドキドキさせる声だ。 「こんにちは、あの、聞こえますか?」 さらに私の想像力が強くなったか。彼女の声がいやにリアルに聞こえる。
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