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女子高生は真顔のまま続けた。
「この本、お求めになられるんでしょうか? 失礼いたしました」
優しく、そして耳に馴染みやすい、温かな声だった。
こんな可愛い女性から、こんな大人びた声が出るのか。
私はそちらの方にびっくりしてしまった。
「え、え、いやー、あの、いやー」
わたしゃ祭りのかけ声か。ちゃんと話せ。『純文学ってどんなんだろうなって気になって』って聞けばいいのだ。
「じゅ、じゅ、じゅんぶんが、その、かわいいのに、大人の女性のような声を出すんだなぁって思って」
だぁあああああ!! 何失礼なこと言ってんだあたしゃ。そもそもかわいいなんて、ナンパ野郎か! 馬鹿か! 一回トイレットペーパーになってトイレに詰まってしまえ!!
「あ、すみません! 違うんです! かわいいんじゃなくて! あ、いや、かわいくないんです! あ、いえ、かわいいんですけど!!」
頭をかきむしりながら、しどろもどろになる。だめだ、こうなったら時間を巻き戻すしかない。時間よ、巻き戻れ!!!!
その女子高生は、ふっと鼻で笑った。
「大人びた声だなってよく言われます。大丈夫ですか? 髪の毛、ぐしゃぐしゃですよ」
わたしのぐしゃぐしゃになったショートカットを見て、彼女は微笑んだ。
その時、私は心臓が止まった。
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