2 仲良く

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ひとしきり彼女が笑ったあと、私たちはある程度、会話ができるようになっていた。 「あ、あの、私、この古本屋が好きで、よく通っているんです」 と、私。 「あ、そうなんですか。私も雰囲気が好きで、学校帰りに寄るんです」 「へぇー。奇遇ですね、私も好きです」 「あ、はい。それは聞きました」 また笑いが生まれる。 古本屋の中で、立ち話をする彼女と私。 聞こえるのは、おじいちゃん店主の小さないびきと、ストーブの上のやかんのお湯が沸騰してシュンシュン言う音だけだ。 「どんなジャンルの本がお好きなんですか?」 彼女は美しい黒髪を耳にかけながら、そう聞いた。 「あ、私はSFとか、そういうのが好きです」 「そうなんですか。私、最近、アンドロイドは電気羊の夢を見るか? という本を読んでいるんです」 それなら、私も知っている。 「あ、ブレードランナーの原作ですね」 「そうですそうです。とにかく壁が薄いんです」 と、彼女は笑った。そこを言うのかと可笑しくなった。 「ふふふ。そこに注目されるんですか?」 話したのはほんの5分ほどだったろうか。でも、彼女のことを知ることができた。 短くても、私にとっては本当に楽しい時間だった。 学校帰りに、ここに寄っていること。純文学だけじゃなくて、SFも好きなこと。 朗読が好きでインターネットか何かで朗読をしていること。 好きな漫画、好きな教科、いろいろ、聞くことができた。 もちろん、私もいろいろなことを彼女に話した。 建設機械の営業とサポートを行なっていること。 仕事がきつくてしんどいこと。 最近の仕事内容。 あとからよく考えれば、仕事の話ばっかりだったな。 次回、もし会えたら、彼女が楽しくなるような話にしよう。 そう、私は決意した。
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