第一部 第二章 襲撃

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 夜が明け、山を下りた祥正らは城下へと向かった。  城下の武家屋敷がある所は人気がなく、商人町もいつもの活気はない。  しばらく歩き、人を探すが、どこも店を出していない。 「誰もおらぬな」  祥正が溜息交じりに言う。 「昨日の今日だ、無理もない」  そう言った尚昭も、落胆した表情を隠せない。 「尚昭殿?」  振り返れば、風呂敷包みを持った二十歳ほどの女が、こちらに駆け寄って来る。 「やはり、尚昭殿でしたか。ご無事だったのですね。祥正殿も加代も」 「義姉(あね)上も、ご無事で何よりです」  四人は再会を喜んだ。そして、女はお百合を見る。 「申し遅れました。(たえ)と申します」  お妙は尚昭の亡兄・尚行の妻であり、祥正、加代の従姉にあたる。祥正の母と加代の母が、お妙の父の妹なのである。 「では、貴女が笛の名手と言われるお百合殿ですか」  お百合が名乗ってから、お妙が言う。 「そんな、たいした腕ではございませぬ」 「従姉(あね)上。ご存じだったのですか」  加代が半ば驚いたように言った。 「ええ。少し小耳に挟んだものですから」  恐縮にございますと、お百合は頭下げる。 「義姉上。あの後、城下の方々はどうなったのでしょう」 「そうでしたね。とりあえず、皆様城内の方にいらっしゃいますから、詳しいことはそこで」
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