第一部 第二章 襲撃

4/7
46人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
「これは……」  思わず目を背けたくなる。 「亡くなった者も、幾人かいらっしゃるようです。動ける者はほとんど女子供ばかりで……」  お妙は、少し奥の部屋に入った。そこに、壮年の女が忙しそうに働いている。 「義母上。ただいま戻りました」 「お帰りなさい。薬はそこに置い……」  顔上げた女が、目を見開いて固まる。 「母上。ご心配をお掛けいたしました」 「……尚昭。一時はどうなるかと思いましたが、よくぞご無事で……。そちらは?」  尚昭の母が、お百合に顔を向ける。 「森内のお百合殿です。城下で皆様にお会いして、お連れいたしました」 「そう。火暮や草屋のことは、よく分からぬのです。永家(ながいえ)様が行方知れずとなられてしまって……」 「えっ」  尚昭の母とお妙以外の五人が、目を見開く。 「まさか……」 「では、誰が家中を取り仕切っているのですか」  祥正や尚昭が口々に言う。 「重臣の河村様や水村様が」  お妙が答える。 「すぐに、火暮へ戻る。父上や母上がご無事かどうか確かめねば」 「わたくしも、草屋へ戻ります」  祥正、加代、お百合は尚昭の母やお妙に礼を言い、部屋を出ようとした。 「あっ。少しお待ちを」  お妙に呼び止められ、三人は立ち止まる。 「お百合殿。森谷家臣の上野家に、妹の里が嫁いでいます。もし、お会いすることがありましたら、伝えて欲しいことが」 「はい」 「こちらは心配しなくて良いと、お伝え下さい」 「わかりました」
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!