【恋愛騎士物語】６５章 残り物には福がある？

嫉妬（キアラン）

　何がどうして、こうなった？

　ギシリと軋むベッドの音、興奮した息づかいに冷静な思考は宿らない。

「あっん、ふっ、んぅ」

　酒の臭いのするキス、熱く滾るような疼きに自由は奪われた。

　そうだ、酒を飲んでいた。そうして、愚痴っていて……

「キア先輩……」
「あっ、んぅ！」

　首筋に触れる唇が軽く吸い付いてくる。こんな事に疼くなんて、知らなかった。息が上がって、頭の芯が痺れてくる。

　どうしてこうなったんだ？　どちらから始まった？

　酔いと熱の回った頭は上手く回らないが、それでも必死に思い出そうとした。
　それでも一つ言える。キアランはこの関係を、拒んでいない。

「本当に、いいんですか？」

　誠実な焦げ茶色の瞳が、切なげに細められている。泣いてしまいそうな目を見つめて、嫌悪もないのに拒むのも可哀想に思える。
　なにより、同じなんだ。互いに余り物だった。

「いいぞ、トレヴァー」

　意地っ張りで、プライドばかり高い余り物。そんなものでよければ、お前の好きにしてくれ。