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「嫌がりませんか? 俺は頭撫でようとすると拒まれちゃって。『いつまでも子供じゃない』って」
「ははっ、そうだろうな。俺の妹はもうそんな年じゃないからしないが、土産を持っていくと『いつも申し訳無い』と言われる」
「それ、ありますね」
こんな他愛ない話だが、安らぐのも本当だ。そしてこんな話、トレヴァー以外聞いてもくれないのだ。
「でもそのうち、離れてくんだろうなー」
「……そうだな」
ふと寂しそうな顔で言ったトレヴァーは、途端にしんみりと酒を飲み込む。その横顔を見るキアランもまた、同じような顔をしていただろう。
「なんか、置いてかれてるんですよね。友人付き合いの悪い奴等じゃないし、一緒にいるのも楽しいんだけど、ふと会話においていかれて。なんか、ズレがあるっていうか」
愚痴るような呟きに、キアランも少し俯いた。
分かる気がする。こんな事、焦っても仕方がない。出会いとか、相性とかもある。タイミングも大事だと聞く。けれど置いていかれている当人は焦るものだ。
これでも昔は同期の付き合いに参加していた。けれどキアランの目には全員が輝いて見えて、そこにいる事がいたたまれなくなった。
分かっている、あいつらに悪意や蔑みの心なんてない。キアランが卑屈なのだ。
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