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理解者(キアラン)
結局、避け続けた。幸い宰相府と騎兵府だ、職場でばったりという事はほぼない。食事の時間は元々不規則で、これまでも会うことはなかった。ラウンジに行かなければ、顔を合わせる事はない。
逃げて、逃げて……それでも妹の結婚式の日取りは近づいて、気持ちは沈み込むばかり。自然と、溜息が多くなった。
「あのさ、キアラン」
「なんだ」
「ウザい」
「なんだと!」
執務室で報告書やらを整理し、今回の戦争の経過や各部署の報告を纏めたりをマーロウと二人でしている。その最中、とても唐突に喧嘩を売られた。
マーロウは呆れ顔のままで頬杖をついている。顔色も良くなって、なんだか憎たらしさまで増した気がする。
「何を悩んでるのか知らないけど、さっさと片付けて仕事してよ。何回溜息ついてるのさ、辛気くさい」
「簡単な事じゃないんだ!」
「そう言って、大抵が自分の問題なんじゃないか。あんた、仕事の悩みならとっくに俺やシウス様に相談してる。また、ちっちゃな事で堂々巡りしてるんだろ?」
指摘されると余計に反発がある。確かに自分の事で悩んでいるが、決してちっちゃな事じゃない。キアランにしたら、大きな問題なんだ。
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