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それ以来、マーロウは黙々と報告書を纏め上げて下を向いたままだった。
考えた、このままでいいのかと。結論は、いいわけがない。
だがどんな顔をしていればいいかが、分からない。謝ればいいのだろうが、なんて謝ればいいかがまず分からない。「あの時はすまなかった」なのか? それとも何でも無い顔で「久しぶり」と言えばいいのか。
それでもこのまま遠ざかるのは、寂しい。今までの奴等みたいに居ても居なくてもいい相手じゃないと思うから、手放す事ができなくて困っている。
とにかくまず食事を取って、その後でラウンジを探そう。そうやって、どんどん後に伸ばしていく。
今日もだめだった、その次の日もダメだった。そうしてとうとう、妹の結婚式前日まで持ち込んでしまった。
「はぁ……」
もう時間が経ちすぎている。今更謝っても何の事だになりかねない。だからって何でもない顔もできない。
どんよりとした気分で部屋に戻ってくると、部屋の前に人影が一つあった。
「あ……」
長身で、案外逞しい体をしたその人物を忘れたりはしない。思わず一歩、足が後ろに引けた。逃げたかったのかもしれない。でもその前に、そこに立っていた人物がキアランの腕を掴まえた。
「待って、キア先輩!」
「え! あっ、いや」
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