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それに、キアランも嫌われたらと思うとなんて声をかけていいか分からなかったのだ。
「あの、何か悩んでいたんですか?」
問いかけられて、考えて、キアランはラウンジではなく自室にトレヴァーを誘った。外でするのは恥ずかしい内容だったからだ。他の意図は何一つなかった。
食後、キアランは自室にトレヴァーを招いた。宰相府の副官であるキアランは一人部屋で、わりと伸び伸び暮らしている。
ここに人を招いた事はなかった。
トレヴァーを座らせ、茶を出してその対面に座る。そして最初は、大きな溜息だった。
「あの、キア先輩」
「いいか、笑うなよ」
「え? あぁ、はい」
「……妹の結婚式の招待状が届いたんだ」
「……えぇ!」
驚きの声と共に立ち上がったトレヴァーの方が慌て始める。少し興奮しているような、紅潮した頬に輝く瞳。喜んでくれているのが分かるものだ。
「あの、いつですか?」
「明日だ」
「明日! 大変だ、えっと……」
「行こうか行かないか、実は迷っている」
正直に話すと、トレヴァーは驚いたように動きを止めた。そして改めて対面に座った。
「行かないんですか?」
「迷っている。その……素直に祝福できるか、自信がないんだ」
「どうして」
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