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「置いていかれる。兄も結婚して子供がいるし、これで妹も。大事だった妹が今後一番に頼るのは旦那なんだと思うと……寂しいというか」
分かっている、妹の幸せを願うのが兄の役割だ。そしてキアランだって妹を女性として見ているんじゃない。いつまでも可愛い妹のままだ。それでも居場所を取られるようで、素直に祝福してやれないんだ。
自分勝手な自分が嫌いになって、言ってしまった後で後悔して、俯いたまま顔を上げられない。
そうしていると、不意に肩を叩く強い手があった。
「気持ち、分かります」
「え?」
「俺も妹が突然結婚って言われたら、気持ちの整理がつかないっていうか、寂しい気持ちもあると思います。いえ、あります」
断言したトレヴァーは、それでも次に「でも」と繋いだ。
「一生に一度の妹の晴れ舞台を見なかったら、いつまでも妹離れできないまま、モヤモヤすると思うんです」
「あ……」
「妹だってきっと気にすると思います。幸せな時なのに、祝福されていないと思ったら心から幸せにはなれないって。そんな思い、兄としてさせたくないです」
ドクッと、心臓が鳴る。そして、妹の気持ちを考えて、覚悟を決めた。
皆に祝福されたいだろう。特に妹はキアランに懐いていた。兄として、例え寂しい思いはあっても送り出してやらないと、妹も幸せに次に行けないんじゃないか。
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