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トレヴァーと知り合って、素直な奴の屈託のない様子を見て、こんな人間もいるんだと驚き、同時に気持ちが安らぐのを感じた。徐々に自分が卑屈すぎるんだと、思えるようになっている。
それに、嘘をついたり心に何かを隠している奴の様子は自然と分かる。主にどれだけ笑顔でも、低姿勢でも、愛想が良くても第一印象が嫌いなのだ。
「何か切っ掛けがあったのですか?」
「え?」
「心持ちが変わったように思いまして。何か切っ掛けがあったのかと」
「それは……」
あると言えば、ある。だが言うのは恥ずかしい。
思わず目を逸らすと、次はウェインがニヤリと笑った。
「そんなの、恋に決まってるじゃん!」
「な! 違う!!」
思わず大きな声が出て、慌てて口を押さえた。周囲も騒がしいから気にする奴はいなかったが、一緒にいる二人はニヤリと笑った。
「ねぇ、誰なの!」
「だから違うと」
「気になる人がいると見えますね。既に私達の事は知っているのですから、隠すのは無しにしましょう」
「だから、そう言うんじゃない!」
男の恋バナなど何が楽しいんだ、恥ずかしい! それに……恋というにはあまりに不確かな感情なんだ。
「恋じゃ、ないと思う。親友……いや?」
口にしてみて、違和感に気付く。友人ではあるし、年の離れた親友か、同胞とも思える。思えるのだが、そこに落ち着く事にチクリと何か小さな骨のようなものが刺さる。
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