嫉妬(キアラン)

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「どうしたの、そんな泣きそうな顔して。困ってるなら、力になるよ」 「煩い。今はお前等に会いたくない」 「お前等?」 「!」  やっぱり酒は駄目だ、相性が悪い。心の中にしまっておきたい事が漏れる。  それでも飲みたい時はあるんだろう。グラス一杯を一時間以上かけて飲むくせに、それで酔っ払って他人に迷惑をかけるくせに。そういうのが、虫唾が走るほど嫌いなのに。 「もしかして、マーロウの事?」 「な! 違う!!」 「確かに驚いたよね」  どうしてバレるんだ。ぐぬぬっとなって、でも最後には力が抜けてカウンターの木目を見つめる状態だ。 「笑え、惨めだろ」 「え?」 「黄金期の落ちこぼれだ。情けないだろ、格好もつかない。どれだけ背伸びしても、所詮俺は……」  呟いて、酒を飲み込む。舐めるようだったのが一口大きく飲み込んだから、喉が焼けるようで思いきり咽せた。 「ごほっ、ごほっ!」 「あぁ! もぉ、大丈夫?」 「煩い!」 「寂しいの、キアラン?」  背中を柔らかなリズムで叩かれ、摩られて、そんな風に問われて。ウルバスは、どうしてこうも他人に甘いんだ。 「俺も同じく独り身だよ。気軽に誘ってよ」 「お前は作らないだけだろ」 「えー、そうかな? 俺はモテないよ、なんせ普通だもん」     
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