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クスクスと笑って、グラスを傾ける。それが絵になる男が、モテないはずがない。
「俺はキアラン、好きなんだけどなー」
「何がだ」
「んー、面倒臭いところ? プライド高くて、意地っ張りで。でも触れてみると恥ずかしいだけだったりして、すぐ顔も赤くなるし威嚇するし」
「貶すな!」
「可愛いと思うんだけどな」
そんな風に言われても嬉しくない。何より、可愛いなんて思われていたなんて心外だ。
溜息が出る。自分の理想は全てをそつなくこなす、そんなクールな男だ。何事にも余裕があって、毅然としていて……所詮理想なのだが。
その時、誰かが違う方向からウルバスを呼んで突進するように抱きついた。
「ウルバス様ぁ、ボリスが裏切ったぁぁ!」
「うわぁ! どうしたの、トレヴァー!」
酒が入っているのだろう赤い顔をした男は恥じらいもなく半べそ状態でウルバスの腕に縋り付いている。その痴態で、キアランは少し酔いが覚めた。
知っている。ランバートの同期で第三師団のトレヴァーだ。彼の代は第三期黄金時代と言われていて、もの凄い勢いで力を伸ばしている。既に何人かは頭角を現し、ランバートに至っては騎兵府補佐官だ。
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