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「こんなの齧ったら、歯が欠けますけど。」
「欠けませんー舐めてればいけますー。」
「いや、岩石サイズじゃん。俺小学校の時こんなの理科で見たよ。こんなん口に入んねーよ。」
「てかさっきから岩石って!! ハートだから!! 」
「ハート!? おまえハート見たことある!? 」
いや、どう見ても岩。
「このへんの窪みが、ハートのあの上のへこんでる..」
「いやわかんねーよ。」
陽菜は、実は料理は上手い。
ただ、壊滅的に盛りつけのセンス諸々がない。
だから、これも食べたらたぶん美味いんだろう。味だけは。
硬さとかは別として、味だけは、たぶんめちゃくちゃ美味い。
「金槌とかなかったっけ。」
「え、まさか金槌でドーンしちゃうつもり?」
「床にドーンするわけにいかないだろ。」
「そんなことするつもりなの!? 私の心がドーンだよ!! 」
「あんなの塊で食ったら俺の顔面がドーンだわ!!」
「顔面がドーンってなによ!! 」
そんな話をしながら、金槌を探す。
いざという時の為(もちろんこの時のためではない)に買った大工用具の中から、小さい金槌を見つける。
幸い、買ってから一度も使ったことがない。洗って使えば、チョコを割っても食べれるだろう。
金槌をさっと洗って、岩石ともう一度ご対面する。
これ、普通に割っていいのか。
めちゃくちゃ飛び散りそうだ。
ゴーグルとか付けた方がいいか。
いや、やめよう。
そこまで本格的にしたら、さすがに怒られる。没収も免れない。
どんな形でも、高校の時からずっと好きだった女の子に毎年チョコを貰えるというのは、悪い気分じゃない。
そう。文字通り、どんな形でも。たとえ岩石でも。
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