七月十八日

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朝顔の少女の、病弱のように白い面貌が僕に向けられる。 正面から見たいという願いは叶えられた。 いや、今はそんな場合じゃない。 潤んだ黒瞳を訝しげに細め、しかし口の端に悦を滲ませながら、少女は己の肘を抱いた。 「じろじろ眺めてさ、えっち」 「そ、そんなつもりは無いよ」 「怪しいなあ。 じゃあどんなつもりで見てたの?」 「あぁっと……」 嘘でも吐いておけば良かった。 だがあまりに突然のことで、相手を満足させるほどの言い訳を思いつかなかった。 「言えないってことは、やっぱり卑猥なこと考えてたんでしょう?」 「誤解だよ」 「だったら教えてよ。 私を見てた理由(わけ)を」 彼女との距離が拳一つほどまで縮まって、僕は半歩下がって朝顔から顔を背けた。 「線の内側に下がらないと、危ないよ」 「あ、話逸らさないでよ」 「別に逸らしたつもりじゃない。 心配しただけ」 「それなら私からも、線の内側に下がらないと危険だよ」 「僕はいいんだよ」 黄色い線は、生と死の分岐だ。 僕はこれから死ぬつもりだから、もう内側には下がれない。 下がらない。 「──もしかして、死のうとしてる?」 的確な意見に表情が引き攣った。
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