七月十八日

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『──入ります列車、八時発──』 二度目のアナウンスはノイズが混じっていた。 二人同時に駅スピーカーを見上げ、「共鳴したね」と笑った。 僕らの『死』が着実に近付いてくる。 遺書を入れ直した鞄を生と死の狭間に引かれた黄線の上に置いて、最期に少女を一瞥した。 まさか同じ日に、同じ死に方を選ぶ人がこんなにも美しい人だとは思いもしなかった。 人生の最期の最期に、一輪の花を咲かせてくれた神様に感謝しよう。 「──あのさ、提案があるんだけど」 三灯式の信号が、青に変わる。 同時に少女の声色も変わる。 周りに配慮してなのか、耳打ちするかのように訊いてきた。 「これから私たちは死ぬんだよね?」 「死ぬね」 「飛び降りるんだよね?」 「……そうだけど」 「やっぱり、止めようよ」 遠方から列車の走行音が聞こえてくる。 それは僕が黙ったから、より鮮明に聞こえた。 「生に縋りたくなった?」 仲間を失うことに恐れた僕の問いかけに、しかし少女は首を横に振り、 「まさか。 電車に轢かれて死ぬのは嫌だなって思っただけ」 「そ、そっか」 「死にたいことに変わりは無いよ」     
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