七月十八日

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表情いっぱいに笑いを浮かべた少女に、僕は一般的観測からすれば歪曲された安心感を得ていた。 彼女もまた、喜色満面の裏に淀みを滲ませていた。 「で、どうする?」 「自殺方法変えてもさ、怒んない?」 「目的は一緒だからね。 死ねるなら何でも」 「分かった。 じゃあ、電車に轢き殺されるのは止めよう」 僕たちの会話は、世間から外れている。 だからこそ楽しく思えた。 「それで、お互いに高校には行かないんだよね」 「行けないね。 鞄に遺書が入ってるの見られたら面倒になるだけだ」 「よし」 少女は胸の前で手を合わせ、思いついた割には的確なプランを述べた。 「これから図書館に行ってさ、死に方を考えようよ。 駅近くに市民図書館あるよね、そこで」 「良いね。 夏休みの自由研究に良いかもしれない」 「面白いね。 絶対に誰にも見られない自由研究だ!」 僕たちを轢き殺すはずの電車が、定刻通りに滑り込んだ。 プシュっと炭酸の抜けるような音がして、乗降者でホームは混雑し始める。 涼しい箱の中から出てきて、途端の日差しに表情をしかめる人の群れに混じり、僕たちも改札に向かって歩き出す。 「なんだか帰るみたいで不思議」 「僕もだよ」 顔を合わせ、また失笑する。 うだる人混の中、僕たちだけは涼しい顔をしていた。
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