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七月十九日
──翌、金曜日。
がらんどうの駅のホームに、携帯を弄りながら僕は立っていた。
弄るとは言ってもゲームなんかはせず、特に意味も無くニュースを流しているだけだ。
時刻は二十二時。 無音の静寂に湿気のある暑さが溜まっていて、呼吸をするたびに不快感がある。
白シャツにボトムスというラフな格好でも、やはり暑さには敵わない。
だから僕は夏よりも冬の方が好きなのだ。
今となっては、冬の寒さに恋焦がれるのも無駄な行いだが。
「──ごめん、待った!?」
ぱたぱたと階段を降りてきた彼女──貴方さんに「今来たところ」と片手を上げる。
前日は夏服にスカートと集団装飾に属していた彼女でも、今日は集団から解放されて僕と同じようにラフな格好をしていた。
丈の長い黒ワンピースに総レースのインナーを着ている。 光の当たり方で闇に浮かんでいるように見えなくもない。
ただ、肩に担いだ鞄は学生鞄で、ファッションとして見るなら不釣り合いだ。
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