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「ほんとに、消えちゃったんだって!」
わたしは小学校で今流行っている噂をまくしたてた。
「ほー、そりゃあ怖いな」
惣菜の里芋を咀嚼しながらモゴモゴとお父さんはこたえた。
「こうやってね、消したい人の背中を指さしながら、キエロ、キエロって本気で願うんだって」わざとらしく目を細め、ピンと真っ直ぐに伸ばした人差し指をテレビに向ける。
「ははは、そんなことで人は消えないよ」お父さんはチビリと口につけたビールのグラスをテーブルにおろす。
「でも、ありさちゃんの塾の友達のお姉さんの友達がほんとに消えちゃったって!」
「ふーん、そんなこともあるのかなぁ」お父さんはさほど興味が無さそうにそう言うと、両手を上に伸ばし、ふあぁと大きなあくびをした。
「明日も、早いの?」
「んっ? ああ、早い。朝ごはんはチンして食べてくれな」申し訳なさそうな顔で立ち上がると、食器をまとめ、流しに運びはじめた。
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