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◇
はやる気持ちを抑えながら、青空公園へ駆ける。
誰でもいいから、側にいてほしかった。
拓海はいつもと変わらない、K高の深緑色の制服を着て立っていた。
「あ、ひな、どうした──」
次の言葉を聞く前に、私は拓海に抱き着いた。
「──ひな?今日は積極的だねぇ」
飄々とした笑い声が聞こえる。
その声を聞いて安心したのか、瞳から熱いものが溢れる。
私は声を殺して、拓海の腕の中で泣いた。
拓海は私が泣いていることに気付いたのか、背中をさすってくれている。
「大丈夫?俺でよかったら、話聞くけど」
「大丈夫……じゃない……」
それから私はすべてを打ち明けた。
今もこれからも話すことはなかったであろう、すべてのことを。
いじめられていたこと、必死に努力したこと、私たちの関係がクラスメイトにバレてしまったこと。
「どうして……こうなっちゃうんだろ……どうして?頑張ったのに、無駄になっちゃうんだろ……私がいけないの?」
「ひな」
拓海は今までに見たことのない、真剣な表情をしていた。
「俺は知ってるよ。ひながいつも頑張ってること」
「え?」
「最新の流行をいち早くキャッチして、メイクやファッションを自分のものにしている。SNSでそういう姿を知って、頑張っているひながまぶしくて……会ってみたいと思ったんだ」
彼の本心を聞くのはこれが初めてだった。
私のことをきちんと見ている彼がいて、それに気づいていない私がいた。
彼はいつもそうだ。
私の変化にすぐ気づいて褒めてくれた。
──あぁ、私が本当に欲しいものはいいねでも、たくさんのフォロワーでもないのかもしれない。
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