しゃぼん玉、割れた。

12/14
前へ
/14ページ
次へ
◇ はやる気持ちを抑えながら、青空公園へ駆ける。 誰でもいいから、側にいてほしかった。 拓海はいつもと変わらない、K高の深緑色の制服を着て立っていた。 「あ、ひな、どうした──」 次の言葉を聞く前に、私は拓海に抱き着いた。 「──ひな?今日は積極的だねぇ」 飄々とした笑い声が聞こえる。 その声を聞いて安心したのか、瞳から熱いものが溢れる。 私は声を殺して、拓海の腕の中で泣いた。 拓海は私が泣いていることに気付いたのか、背中をさすってくれている。 「大丈夫?俺でよかったら、話聞くけど」 「大丈夫……じゃない……」 それから私はすべてを打ち明けた。 今もこれからも話すことはなかったであろう、すべてのことを。 いじめられていたこと、必死に努力したこと、私たちの関係がクラスメイトにバレてしまったこと。 「どうして……こうなっちゃうんだろ……どうして?頑張ったのに、無駄になっちゃうんだろ……私がいけないの?」 「ひな」 拓海は今までに見たことのない、真剣な表情をしていた。 「俺は知ってるよ。ひながいつも頑張ってること」 「え?」 「最新の流行をいち早くキャッチして、メイクやファッションを自分のものにしている。SNSでそういう姿を知って、頑張っているひながまぶしくて……会ってみたいと思ったんだ」 彼の本心を聞くのはこれが初めてだった。 私のことをきちんと見ている彼がいて、それに気づいていない私がいた。 彼はいつもそうだ。 私の変化にすぐ気づいて褒めてくれた。 ──あぁ、私が本当に欲しいものはいいねでも、たくさんのフォロワーでもないのかもしれない。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加