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◇
東雲拓海と私は、本当の恋人同士ではない。
拓海はSNSの投稿のいいねとフォロワーを稼ぐための、彼氏である。
クラス内で作られるピラミッドの足場は悪く、少しでもバランスを崩せば、真っ逆さまに落ちてしまう。
そうなったら、私の人生は終わったも同然だ。
ピラミッドの頂点に居続けるために、必要なことはいい意味での注目だ。
その注目の一つにSNSのフォロワー数やいいねも含まれている。
私はどんな手を使ってでも、注目を浴びなければならない。
・・・
二度とあんな目に遭わないために。
彼との出会いは、今から2ヶ月前。
場所は青空公園だ。
SNSの裏アカウントで、偽物の彼氏を探した。
相手が年齢や姿を、偽っていることもあるだろうという覚悟の上だ。
公園についた私は、肝を潰した。
そこにいたのはプロフィール通り、K高の制服を着た眉目秀麗な男だったからだ。
彼は私の要望を快諾した。
あまりの決断の早さに不審感を抱いたものの、2ヶ月たっても彼の態度に変わりはない。
ひょうひょうとした、掴みどころのない男のままである。
友達でも無ければ、恋人でもない。
それ以上でもそれ以下でもない。
東雲拓海はあくまで、私にとって他人なのだ。
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