1人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
◇
ある日、登校すると靴箱の中にあるはずの上履きがなかった。
前にも同じ経験がある。
嫌な予感がした。
が、瞬時にその考えを打ち消す。
──大丈夫、今の私なら。
靴下のまま歩くわけにいかないので、職員室で来客用のスリッパを借りる。
教室の扉を開ける。
いつもなら唯が真っ先に駆け寄って、「おはよう」と言ってくる。
だけど今日は違った。
私が扉を開けた瞬間、教室は水を打ったようだった。
冷たい視線が身体中をに突き刺さる。
それは束の間で、クラスメイトたちはおしゃべりを再開した。
私は気づいていた。
遠巻きに女子のグループが、私の陰口を言っていることを。
バリアを張るように、席に向かう。
私の席は廊下側の一番後ろだ。
私は絶句した。
私の席は──
上履きやペットボトル、紙くずなどのゴミが山積みになっていた。
「何……これ……」
指先から心臓にかけて凍りついていく。
呼吸が浅くなる。
目眩がする。
頭が真っ白なる。
私の意識を、引き戻したのは唯だった。
「おはよう、ひな」
「おはよ……」
唯はいつもと変わりない笑顔だ。
そのことに少し安心する。
最初のコメントを投稿しよう!