しゃぼん玉、割れた。

7/14

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
◇ ある日、登校すると靴箱の中にあるはずの上履きがなかった。 前にも同じ経験がある。 嫌な予感がした。 が、瞬時にその考えを打ち消す。 ──大丈夫、今の私なら。 靴下のまま歩くわけにいかないので、職員室で来客用のスリッパを借りる。 教室の扉を開ける。 いつもなら唯が真っ先に駆け寄って、「おはよう」と言ってくる。 だけど今日は違った。 私が扉を開けた瞬間、教室は水を打ったようだった。 冷たい視線が身体中をに突き刺さる。 それは束の間で、クラスメイトたちはおしゃべりを再開した。 私は気づいていた。 遠巻きに女子のグループが、私の陰口を言っていることを。 バリアを張るように、席に向かう。 私の席は廊下側の一番後ろだ。 私は絶句した。 私の席は── 上履きやペットボトル、紙くずなどのゴミが山積みになっていた。 「何……これ……」 指先から心臓にかけて凍りついていく。 呼吸が浅くなる。 目眩がする。 頭が真っ白なる。 私の意識を、引き戻したのは唯だった。 「おはよう、ひな」 「おはよ……」 唯はいつもと変わりない笑顔だ。 そのことに少し安心する。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加