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「ねえ、タンサさんって知ってる?」
公園のベンチに腰掛ける奥田幸一の隣で、少女が言った。
「なんだい、タンサさん?サンタじゃなくって?」
幸一は少し笑って聞いた。子供が好きな幸一は、こういう小さい子の言い間違いや突飛な発想が微笑ましかった。だが目の前の少女は大きく首を横に振った。
「違うよ、タンサさんはサンタさんとは違うんだ」
「へえ、どう違うの?」
「えっとね、サンタさんはいい子にしてるとプレゼントをくれるけど、タンサさんは持って行っちゃうんだ」
「持って行っちゃうって何を?」
「大事なものを持って行っちゃうんだって。クラスの子がね、言ってたよ」
なんだそれは。それじゃあただの泥棒じゃないか。幸一は思わず笑ってしまったが、少女はあくまで真面目な表情だった。
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