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「へえ、僕が前住んでたところでは聞かなかったなあ。サンタさんみたいにいい子にしてると来るのかい?」
「ううん、悪い人のところにね、来るんだって。子供だけじゃなくって、大人のところにもだよ。それでね、宝物をひとつ持って行っちゃうんだって」
都市伝説の類だろうか。幸一も子供の頃は口裂け女だとか人面犬だとか、そういう噂を真に受けたものだ。すっかり信じてしまっているらしく、女の子は幸一の顔をじっと見つめて離さない。
「じゃあいい子にしてないとね」
「いい子にしてたら、私の病気も持って行ってくれないかなあ」
ぼそりと、消え入りそうな声で少女は呟いた。幸一は何も答えず、ぼんやりと公園の中央を見つめた。空には暖色が混ざり始め、子供たちの笑う声が公園中に響いた。
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