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幸一が少女に出会ったのは、この公園でのことだった。数か月前にこの街へ引っ越して来た幸一は、近場に公園を発見した。
日当たりも良く公園はとても過ごしやすかったため、幸一は多くの時間をここで過ごすようになった。日中に公園のベンチが設置されている場所へ行くと、いつも少女が先客でベンチに座っているのだった。
幸一は少女から離れたベンチを選び、時折彼女を観察した。そうして分かったのは、彼女の視線はいつも公園中央にある遊び場のほうへ向けられていることだった。遊び場では遊具がいくつかあり、子供たちが楽しそうに遊んでいる。
ある日、幸一がベンチに腰かけていると、隣に少女が座ってきた。その日はたまたま公園に来ている人が多く、ベンチも全て埋まっていた。
思いがけないことに幸一は驚いたが、辺りを見回し思い切って声をかけてみた。周囲には人も多く、まさか白昼堂々犯罪行為を企む人間が幼い子に声をかけるというシチュエーションは考えにくいだろう。ポカポカした陽気の中で、少女の警戒心も薄れている、という計算があってのことだった。
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