三章

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薄暗い自室。 まるで効かない暖房。 参考書しかない本棚。 丸められた敷布団。 これが本当に女子中学生の部屋かと、自分でも疑いたくなる。 情けなくなって、こころは必死にシャーペンを動かした。 (関係ないから…全部高校を卒業したら終わるから…) ついさっき会った変な男を忘れたくて、さらに勉強に打ち込む。 (別に勉強なんて好きじゃないし。将来自立するためにしてるだけの作業だから) とめどなく湧いてくる雑念を必死に振り払いながら、ノートに並ぶ文字の羅列を追う。 (ペンは剣より強しだから。こんなの全然苦じゃないっ!) とうとう我慢できなくなって、こころはノートと教科書を閉じた。 全部投げ捨てたい衝動に襲われながら、実行に移せない自分に絶望して、こころは床に座り込む。 「死ね…」 汚い言葉を使えばクラスメイトたちに近づけるんじゃないか、なんて淡い希望を持って吐き出したその声は震えていた。 ますます自分が哀れで、ごろっとその場に寝転んだこころは耐えきれずに漏らす。 「こんな事で…」 たかがいつも通っていた神社にたまたま人がいただけじゃないか。 自分の場所だと思っていたのが、そうじゃなかった。 「それだけなのに」 ガチャ 呟いた彼女の元に、この家の主が帰ってきた音が届いた。 さっと青ざめて、こころは机に向かう。慌てて教科書を開き直した。 跳ね上がる心臓がうるさくて、下唇を噛んだこころは、またシャーペンへと意識を落とした。
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