3 彼女の感触

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口角を斜めにあげて、缶ビール片手に、IT関係で勤める涼介が言った。 彼だけが唯一酒が飲める体質で、僕らはまったくの下戸だ。 「それって小遣い稼ぎのカモにさせられてるって事じゃん。 そういうのはデートじゃなくてエンコーって言うんだよ。 オジサン、映画代出して―。 次はこれ買ってーって」 涼介は伸びきった前髪を雑にかきあげた。 僕らの中では割とマシな顔立ちのくせに散髪嫌いなせいで、せっかくの持ち味を生かし切ることなく、ただのむさくるしいPCバカに成り下がっている。 皮肉屋で挑発的なものの言い方。 それで涼介は損をする。良く分かってはいても、どうにも腹が立つ。 「エンコーって……」 「美人局ってこともあるよね」
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