3 彼女の感触

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雅也はある時、本気で地下アイドルにはまり、その子に人生を捧げていたと言っても過言ではないほど一途になった。 初めて出来たファンに彼女の方も最初の頃はまんざらでもない様子だったが、徐々に人気が出てくると雅也の扱いが雑になってきた。 握手会で雅也の手を握りながら、彼女が満面の笑みを浮かべて言ったのだ。 「チョーキモーイ」 彼女は軽い気持ちで言ったのかもしれないが、雅也は深く傷ついた。 戸惑って泳いでいた雅也の目が、今も僕は忘れられない。 潔癖症の健斗は、もうすでに女性と付き合う事すら諦めてしまっているように見える。 そもそも、ジブリアニメのヒロインを理想の女性に掲げている段階でハードル高過ぎなのだとも思うが、 『いいじゃん、それなりにときめいてるんだから、ぼくも……』 目じりを下げてアニメのポスターを見つめている健斗を、僕は否定することができない。 傷つきたくないのは一緒だ。
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