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聡美さんはそう言っている間も、僕の背中をずっとさすってくれていた。
男女兼用のトイレの鏡に、うなだれる僕と、僕に寄りそう聡美さんが写る。
僕はネクタイを緩めようと手をかけるが、いつものように手が動かせず苛立っていると、聡美さんが見かねて代わりに緩めてくれた。
こんなに近くで聡美さんの手を見るのは初めてだった。細く青い血管がうっすらと見える白い手。
中指には、ゴールドの華奢なリングがはめられていて、小さなパールとピンクの石がとても似合っている。
そもそも、女の人の指をまじまじと見るなんて初めてのことだ。
それが、僕のネクタイを緩めていると思うと、こんな状況でも、正直、僕は興奮した。
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