0人が本棚に入れています
本棚に追加
「私、ここに来て良かった。目が覚めた気がする」
不安を隠せずに黙りこくる僕に、冷めちゃうよ、とココアを勧めてから、
「私、大丈夫だから。心配しないで」
そう言った彼女の目には昨日までの不安が消えていて、驚くほど澄んでいた。
女の子は、どうして急に大人になってしまうのだろう。
「あきら君、ココア付いてるよ」
袖で拭こうとした僕の腕を掴んで、瀬奈が僕にキスをしてきた。
僕の不安を取り除こうとそんなふうに優しいキスを繰り返されていると、どうしても僕は泣きたくなってしまう。
大丈夫だ、とそう言う彼女の言葉を信じるためにも、僕はもっと強くならなくちゃいけない。
分かっているのに、僕は彼女の手を放すことにまだ躊躇っている。
最初のコメントを投稿しよう!