1 彼女の体温

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吐き出されるようにして僕と彼女は市川駅に下りた。 彼女はようやく僕から離れ、顔をあげてまっすぐに僕をみた。 こげ茶色の瞳にはさっきまでの緊張は薄れ、柔らかく微笑んでいた。 「……大丈夫?」 鼻の詰まった声で、僕はようやく彼女に声をかけることが出来た。 「何度も車両も通学時間も変えたのに、同じ人に触られてて、本当に怖かったから助かった。ありがとう」 「え?ああ、ホント?」 くしゃみが止まらない。 「……ごめんね、ちょっと待ってね」 僕は彼女の存在を全く無視して鼻をかむ。格好なんかつけていられない。 彼女は心配そうに眉を八の字にして僕を見ているが、口元は笑いを必死にこらえているのがわかる。
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