1 彼女の体温

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彼女は大きく頷いて見せたので、僕は人ごみに紛れて階段を下りようとするとすかさず彼女に呼び止められた。 「ライン、良いですか?」 「え?」 彼女はスマホを取り出して、大きな目で僕を見つめてくる。 「……ああ、ラインね」 同じ時間の同じ車両に乗るだけなのに、 連絡先まで交換する必要があるのだろうか。 僕は通勤客を詰め込んだ総武線を横目で見送りながらそう思っていたのだが、 僕のスマホと自分のスマホを両手に持ったまま 真剣な顔をしている彼女を見て気が付いた。 とてもかわいらしい顔立ちをしていることに。
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