1 彼女の体温

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キーボードを打つ手が止まり、 僕の目は画面の奥の一点を見つめ始める。 そこには、瀬奈がいる。 僕は、どうしたら良いのかわからなくなる。 「仕事しろ!ほら、電話!」 隣に座る聡美さんのどすのきいた低い声が響いて、 後頭部をはたかれる。 そしてすぐに1オクターブ高い声で、 「賃貸営業部、川嶋でございます」 そう電話を取るのだ。 まずい、まずい。 杉にやられ、 瀬奈にやられ、 このままじゃ僕は本当に死んでしまう。 僕は必死になって瀬奈の笑顔を胸の奥の奥にしまい込んだ。
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