1 彼女の体温

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ああ……それにしても目がかゆい。 どんな手を打つか考えあぐねていたその時、電車が大きく揺れて、僕は前につんのめった。 そしてその偶然の力を借りて、僕は女子高生と男との間に自分の身体をねじ込ませて、男の手と彼女の身体を分断に成功した。 角に彼女を追いこんで僕が壁になれば、男はそう簡単には彼女に手は出せないだろう。 その証拠に背後の男が、悔し紛れに、 「いってえな、気をつけろ」 と言い放ったので、僕は、 「すんません」 そう頭を下げて、タイミングの悪い気弱なサラリーマンを貫いた。 そしてそこからまた、数連発のくしゃみにやられた。 ごめん、これが今日の僕の精一杯だ。
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