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彼女は市川で降りるまで、何も言わずに僕に抱き着いたままだった。
僕も拒絶せず、そのまま彼女の体温をビビりながらも味わっていた。
ごめん、痴漢男よ。
お前の気持ちもわからなくはないが、これはまっとうに生きていればこそのご褒美だ、きっと……。
十分にも満たないそのわずかな瞬間は、
僕が生きてきた中で
一番セクシュアルな時間だったのにもかかわらず、
杉の花粉に侵された僕はなす術もなく、
くしゃみ地獄に飲み込まれていた。
なんともったいないことか!
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