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八月の暑い日で、ノースリーブの美紗の肌はうっすらと汗ばんでいた。
僕は、その時初めて彼女の肌に触れた。
冷たくて柔らかい感触が、今も僕の心に絡んでいる。
堕ちるような、引きずり込まれるような感覚があって、滲み出てくる愛情が、僕の視界を濁らせ始めていたことを、その時の僕はまだ気が付いていなかった。
美紗が、細い指を僕の髪に絡ませて遊んでいる。
布団の上から僕に身体を預けて甘えてくる。
僕は固く目を閉じて耳を塞いだ。
「ねえ、晋弥君……」
恐る恐る薄目を開けると、布団の隙間から美紗が僕を覗き込んでいた。
僕に媚びるその小動物のような笑みに、不覚にも切なさがこみあげる。
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