Tango Down

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僕は目を閉じて、迫ってくる波に飲み込まれるのを待った。 問題は、恋に狂った妻じゃなくて、それを見て見ぬふりをしている僕にある。 曇った視界には正論すら霞む。 それはわかっている。 寛容?そんなんじゃない。 激しい嫉妬で、今にも気がおかしくなってしまいそうだ。 それでも、それを追求すれば、離婚は避けられない。 僕にはまだそんな覚悟は出来てはいない。 だから、目を伏せてはため息を吐く。 そうしていればすぐに飽きて、僕の所へ戻ってくる? そんなに簡単に考えてもいない。 ただ、今の僕には、やり過ごす以外に、別の得策が思いつかないだけだった。 そんな僕をあざ笑うかのように、美紗は流行りの曲を、キッチンで口ずさむようになった。     
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