Tango Down

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バイトを始めたばかりのころ、そう言って、その少年のことを僕に話してくれた事がある。 おそらくその頃には、もうすでに、美紗は彼に好意があったのだろう。 帰宅した僕がやんわりと彼女を追及すると、 「バイトの帰りに、一緒に遊びに行っただけだよ。大げさだよ」 悪びれもせずに、美紗はそう言ってむくれた。 「相手もそう思っていると思う?」 美紗は僕の目を見ない。それだけで、もう、君の有罪は確定だ。 それなのに、 「一回だけだよ……」 美紗はそう言って爪を噛んだ。 配慮に欠けた彼女のその一言が、身体を重ね合う少年と美紗のシルエットを、強制的に僕の脳裏に浮かび上がらせる。 拷問だ。     
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