0人が本棚に入れています
本棚に追加
黒かった肌は落ち着いていて、少し痩せたせいか、ショートカットが良く似合っていた。
彼女はまっすぐ僕に近づいて来て、懐かしいね、そう微笑むと急に涙ぐんだ。
当時の彼女は、バイト先で知り合った上司と不倫をしていた。
僕に会えて泣いたのではなくて、叶わない恋に涙を流していただけだったのだ。
それなのに僕は、先輩たちをうまく巻いて、帰りがけの美紗を必死で捕まえた。
これを逃したら、もう二度と美紗に会えないような、そんな切迫感が僕にはあった。
弱っている彼女に付け込むようで、心のどこかに罪悪感みたいなものはあったが、そんなこと、構ってなんかいられなかった。
追いかけてきた僕に少し驚きながらも、美紗は僕に抱き着いて来て、耳元で、うれしい、と囁いた。
最初のコメントを投稿しよう!