0人が本棚に入れています
本棚に追加
「近くまで迎えに来てくれるから、大丈夫」
濁ったままの視界じゃ、もうこれ以上先に進めそうもない。
でも、これ以上君にしがみ付けば僕の負けだ。
「身体に気を付けて……」
心にもない陳腐な言葉を美紗の背中に投げかけた。
屈辱と憎悪をねじ伏せて、僕は美紗と離婚をした。
残されたのは、酷い喪失感だった。
空っぽの僕は、四六時中、未だに美紗のことばかり考えている。
活字も、音楽も、映画も、この虚無感を埋めるには無力だった。
彼女に拒絶されて持て余した僕の愛情は、日に日に酸化してゆくようでいたたまれない。
最初のコメントを投稿しよう!