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文庫本もスマートフォンもすべてカバンの中にしまい込んで、仕事帰りの電車の中、黒い窓ガラスに写り込む自分を見ながらぼんやり考える。
何がいけなかったのだろう、と。
出入り口付近に立ち尽くす僕を、乗降客が邪魔そうに避けてゆく。
乱暴に背中を押し出された僕は、いつかの駅に降り立った。
ふと見上げた先に、僕の目がとまった。
いつもなら流してしまうような見慣れた風景のある一か所。
ガラス張りのスポーツジムが見える。
憑りつかれたようにベンチプレスを持ち上げる人。
何かを見つめながらランニングマシーンの上をひたすら走る人。何が楽しいのだろうと思った。
それなのに、車掌のアナウンスが響く中、僕はその電車に背を向けて、階段を駆け下りていた。
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