届けたくて

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 地元の企業に内定が決まった私は、卒論も書き終えると二月にはUターンの準備を始めていた。  両親からは実家で暮らせと言われていたが、一度一人暮らしの気楽さを覚えてしまうとそれを手放すことはできない。それで地元でアパートを探すことにした。  二月に入ると私は一度地元に戻って不動産屋を巡った。  大学に入学する時は父と共に探したが、今度は独りで不動産屋を尋ね歩く。生れ育った街だが高校生までは不動産屋がどこにあるかなど全く意識していなかったので、ネットで探すとこんな所にあったのかと新鮮な気持ちになる。  そうして不動産屋を訪れては、気になった物件を見せてもらっていた。  実家からさほど離れていない場所を選んだこともあり、馴染みの場所を巡り歩くと思い出が蘇ってくる。  私は物件を観終わった後もしばらくブラついてから帰ることにした。  気ままに歩いていると、自分が通っていた中学校に足が向いていた。考えてみると、卒業してから訪れた記憶が無い。  今日は平日だ、こういったご時世なのであまりジロジロ見ていると不審者と思われる可能性がある。  しかし、余りにも懐かしかったので学校の周りを一周してから、自分が使った通学路をたどることにした。
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