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悶々としながら歩いていると須藤の家の前まで来てしまった。
もっと気の利いたことが言えなかったのかと後悔が押し寄せる。
「じゃあ、おれは行くから……がんばれよ!」
私は立ち去ろうとした。
「まって!」
今までで一番大きな声を佳那恵は出した。
「ごめんなさい、わたしの代わりにこれを須藤くんに渡してくれない?」
彼女は紙袋を私に差し出した。
いくら何でもそれはないだろうと私は思った、人の気も知らないで……
「自分で渡さないと意味がないだろ?」
「……わかってる。でも……ダメなの……」
佳那恵の瞳に涙が溢れた。
「おれは応援団だから、お前を応援するぜ。だから、勇気を出せよ」
精一杯励ましたつもりだが、彼女は首を振った。
「ごめんなさい……勝手なこと言って……でも……お願い……やっぱり会えない……」
何か込み入った事情がありそうだ、そうなるとこれ以上何も言えない。
私は紙袋を受け取った、本当は私がこれをもらいたかったのだ。でも、この袋には私への思いは欠片も入っていない。
佳那恵は深々と私に頭を下げた。
「わかった、渡してくる」
私はインターフォンを鳴らした。須藤の母親がでたので彼を呼んでもらう。
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