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「どうしたんだ?」
今度は心配そうに須藤が私の顔を覗き込んだ。
私は彼に佳那恵に会ってここまで連れてきたことを話した。
「人違いじゃないのか?」
須藤の顔が青ざめている。
「いや、間違いない」
私が湯川佳那恵を間違えるはずがない。
「おい、笑えないジョークだぞ!」
怒気を含んだ声で彼は私を責めた。
私もムキになり、ここまで連れてきたのは湯川佳那恵で間違いないことを主張した。
「湯川が来るはずないんだよ」
「来たんだよッ、さっきまでここに居た! おれは彼女と話したし、お前の家を探して道に迷っていたから連れてきたッ」
「だからあり得ないんだってば!」
「だからなんでッ?」
須藤は青ざめた顔に血走った眼で私を見つめた。
「湯川は……湯川佳那恵は……四年前に交通事故で亡くなったからだ」
「え?」
人違いだッ、その言葉を私は飲み込み、泥まみれの紙袋を凝視した。
私が受け取った紙袋はあんな状態ではなかった。
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