蛇足

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予想と反して学校周辺には今は誰も居なかった。 集合は8時45分、現在の時刻は8時を少し過ぎた程度か。 いつもはこの時間からちらほら人が現れるのだが・・・ 念の為、この場所でも一眼レフを構えて写真を撮っておく。 2、3枚撮って一旦カメラを下げると、遠くから走ってくる人影が見えた。 ──あの茶髪のポニーテールは。 そう思い目を凝らすと、案の定、それは2年生であり私達の協力者である蓮本 敬寧先輩のものだった。 敬寧先輩はそのまま私の近くへ駆け寄ると、膝に手を付きながら呼吸をする。 家から此処まで走ってきたようで、大分息が上がっていた。 「ああ、敬寧先輩でしたか・・・Good morning.」 「お、おはよう・・・ノアちゃん、あの・・・」 「あ、ああ、言いたい事は何となく解ります。恐らく、私の組織で何とか出来る事ですから・・・申し訳ないのですが、私とユラは今日部活を休む、とお伝えいただけませんか?」 そう言うと、敬寧先輩は心の中で何か納得したのだろう、1度深く頷いて、それからもう1度、今度はうん、と返事をしながら頷いた。 「Thank you.」 そう言って、私はその場を去る。 敬寧先輩は大分呼吸が安定していなかったが大丈夫だろうか、と振り返ると、遠くにまた人影が見えた。 長い黒髪を揺らしながら優雅に歩いてくるその人は、敬寧先輩と同じ2年生であり、私と同じパートに所属するヴィオラ・カルデローネ先輩だ。 小さく会釈をすると、ヴィオラ先輩は遠くからでも解る優雅な笑みで返す。 後は任せましたよ、と心の中で思いながら私はフォールの屋敷へ、そして元の世界へと戻った。
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