私、もう少し落ち着きたいのですが。

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 本来、魔蔵は何らかの力で栓を締められているらしいのですが、大半は母体から外へ出てくる際、勝手に栓が抜けてしまうようです。そうして初めて体内を魔力が循環していき、気が付けば意のままに操れるようになっている。これが常識のようで御座います。  しかしながら、私はそういったモノが存在しないと言われていた世界出身なわけで。  そのことをスウサに打ち明けたところ、栓自体は使い魔契約の時点で抜けていたらしいのです。けれども魔力は循環することなく、何故か魔蔵の中に留まっていた、という不思議な状態。スウサ自身もこのような現象には遭遇したことが無いようで、詳しくは人里に居りてから調べてくれとの事で御座います。  本来使い魔契約には双方の魔力が必要だったらしいのですが、今回はスウサが負担してくれたようです。そのせいか、現在は仮契約状態との事。その事実に一瞬背筋が凍ったのは秘密で御座いますよ。  兎にも角にも、こうして新たな情報を仕入れた私はスウサに連れられ小さな集落へと訪れておりました。 「先程お伺いしておりましたが、何とも、まあ」  私の第一声はこんな感じで御座います。  石造りの、色味の無い建物が三件ほど存在しておりますが、それ以外は木造の簡素な建物が並んだ小さな村。此方側から田畑が見えない事を察するに、反対側か若しくは少し離れた位置に置いているのでしょう。森は何かと危険ですからね。  小さく声を漏らした私を見て、スウサが獣らしく笑い声を上げました。 「集落、仕方がない。もっと先、街ある」  纏っていた炎を何処かへ仕舞ったスウサは、ただの虎となって私の傍に座っております。炎が危険だと判断し、如何にか出来ないかと頼んだところ消して頂けたのです。
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