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「……あなた、言葉がお分かりで?」
馬鹿にしてはいけませんよ。人間思い切りが大切だったりします。
「分かる、が、食べる。でも、お前、変。口」
「食べるのはご遠慮願いたいところで御座いますが……口が変と。申し訳ありませんが、どういう風に変なのか理解に苦しみます」
此方の問いに対し的確な返答を返す虎。やはりこの虎は相当頭が宜しいのか、将又何かしらの実験を身に受けた個体なのでしょう。
私は彼が仰った〝口が変〟という文言について頭を悩ませます。
しかし、生憎彼の声は耳に届いているものの、肝心の口はずっと開いたままで動きません。変と言われましても何が可笑しいのか、見当をつけることが出来ませんね。
じりじりと間合いを詰めてくる虎から同じように距離を取りながら悩み続けた私は、ある一つの〝可能性〟を思いつきました。
それが――ここが日本、若しくは地球ではない何処かであるという事。
先程この虎が実験か何かで人語を理解し発すると思っていましたが、よくよく考えてみますと現代にそんな技術は存在していなかったような気がします。
あるのであれば、そういった機関の方々が隠蔽する必要などありませんし、それを機械か何かに転用してしまえばぼろ儲け間違いなしの案件でしょう。
それに最初から気になっている彼の纏う炎。これがまた不思議でなりません。こんな燃え続ける炎を身に纏い、正常に稼働を続ける獣などあってはなりません。
仮に新種だったとしましょう。であれば、何故こんなにも危険な動物が今の今まで見つからなかったのでしょうか。現に今、彼が通って来たであろう道は轟々と燃え盛っています。此処は森らしいので、森林火災確定ですね。恐ろしや。
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