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翌日の朝も、旅立つのではなく、故郷の国に戻るということなのに、武人の青年は、寂しそうな表情を隠そうともせず、見送る商人とシズクに礼を述べます。
───ヒャッハー、折角故郷に帰れて、私達は会いたくても会えない家族にも会えるって言うのに、何をそんな時化た面になっているのよ。
女商人が口元を"へ"の字にし、わざわざ眉間にシワをつくって、偽名の青年に叱りつける言葉を口にします。
───いえ、その、故郷に戻る事に関しては、嬉しいし、その初めて親元を離れて初仕事をこなした達成感とかもあるんですけれども……、また少しだけ窮屈な毎日に戻ると思うと。
窮屈という単語を耳に入れたなら、そこで再び商人曰く、"時化た面"をしてしまっている偽名の青年の様子に、女商人が察したようにへの字の口元を、横に長い楕円の形にして、ああ、と多少同情の声を漏らしました。
───ヒャッハー、そう言えば育ちだけで言えば、教育は厳しいものだったかも知れないけれども、貴族の坊っちゃんだったわ、このサブノックのお兄さん。
───サブノックという国ではそんなに、貴族の生活は窮屈な物なのですか?。
シズク自身は、自国で平定前では、"とても高貴な御方"と例えられる貴族や富裕層とも呼べる階級の方々の、使用人という立場で給金を頂く立場で働いていましたが、そこまで窮屈そうな印象は受けませんでした。
どちらかと言えば、主と呼べる立場の漆黒の衣を好む御方は"休息"する為にシズクを孤児院から引き取ってくれた貴婦人が取り仕切る屋敷に、癖っ毛八重歯の秘書的の人物を伴って赴いていた様に記憶しています。
ただ、そこまで考えた時にふと思い浮かんだのは、自分が働きつつも世話になっていたお屋敷は、もしかしたら窮屈の逆を提供する場所だったのでは?という物になりました。
しかしながら、もう確める術もないので商人殿が、発破をかけて偽名の青年を励ます姿を眺める事になります。
―――ヒャッハー、窮屈なのが嫌なら少しでも早く出世して、偽名を使わなくても単独行動が出来るようになればいいでしょうに!。
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