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―――もう二度とないという事は、あるのでしょうか?。
二度とないという所に、シズクが軽く拘ってしまうのは、彼女がを最初王都を離れた理由と、昨日の突如として南国を離れなければならなくなった事情を思い返せば、女商人には直ぐに察しが出来ました。
けれども、貴族の文化から発展した決闘の件に関しては、国が傾いてから平定迄の国の状況を鑑みたなら、"何が何でも絶対"にという言葉は使えませんが、行われないというだろうという言い切りくらいは構わないと思って、女商人は口にします。
―――ヒャッハー、それにね再評価されないのは、セリサンセウムが傾いて、民は平等に命の危険に晒されて、その恐怖を味わった事で、命が尊ばれるとまではいかなくても、無駄にしない世相にはなったと思うわよ。
女商人が南国で商売をしている間にも、商売相棒が齎してくれたセリサンセウムの情報として、代闘士という仕事が、ほぼ商売として成り立たなくなり、消えてしまったとも伝えます。
それでも傭兵や用心棒と言う仕事の派生で、決闘とまではいきませんが"雇い主・依頼者の身を護衛する"という職種として独立して、組合が出来たとも詳しく話しました。
そこまで話したなら、シズクは幾分か落ち着いた様子で小さく息を吐き出し、深呼吸を行うのを眺めながら、フム、といった調子で意識的に、明るくして言葉を掛けます。
―――それでね貴族さまの間では決闘のような事は、今のセリサンセウムでなくなったとしてシズクの言う様な、単純明快な喧嘩の解決の仕方もあると思うんだけれども……そのどちらもピーン・ビネガー公爵の長女を除いた御息女達には通用しないと思うのよ。
―――え?。
何をいきなり話を割り込ませているのだろうとシズクは感じましたが、振り返ってみたなら、元はそちらの方が本筋だったと話を思い出します。
―――まあ、貴族同士の決闘文化が残っていたなら、ピーン・ビネガー公爵はもっと頭を悩まして、噂で評判の真っ白な髪を今度は何色にさせていたでしょうね。
人の悪い笑みを作ったのち、それから腕を組んで不敵な笑みを女商人は浮かべます。
―――さて、如何に不幸せに見える婚姻話を始めましょうか。
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